登録販売者の資格に更新はいるのか?毎年度の研修・退職時の消除・働き直すときの手続き
登録販売者の販売従事登録に、更新の手続きはありません。薬機法にも施行規則にも、有効期間や更新を定めた条文が置かれていないからです。ただし「何もしなくていい」ではありません。働いているあいだは毎年度の研修があり、働かなくなったときは30日以内の消除申請があります。混同しやすいこの2つと、資格の更新とを分けて確認します。
結論:更新という制度がそもそも置かれていない
薬機法で登録販売者の登録を定めているのは第36条の8(資質の確認)です。この条文は第1項から第4項までで、更新について定めた項がありません。
施行規則第159条の8第1項が定める登録販売者名簿の登録事項も、登録番号と登録年月日、氏名・生年月日・性別・本籍地都道府県、試験合格の年月と試験施行地都道府県名、知事が必要と認める事項の4つです。有効期間が入っていません。
「更新が不要」というより、更新という手続き自体が条文に存在しないと読むほうが正確です。期限がないので、切れることもありません。
同じ薬機法でも、店の許可には更新がある
登録に更新がないのは、法律が更新を書き忘れたからではありません。同じ薬機法の中に、はっきり更新を定めた条文があります。
薬機法第24条第2項(医薬品の販売業の許可)。
「前項の許可は、六年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。」
| 対象 | 根拠 | 更新 | 期限が切れたら |
|---|---|---|---|
| 医薬品の販売業の許可 (店・事業者) | 法第24条第2項 | 6年ごと | 効力を失う |
| 販売従事登録 (登録販売者本人) | 法第36条の8 | 規定なし | — |
※ e-Gov法令検索(確認日 2026-10-11)。
店の許可には「六年ごと」「効力を失う」と明記されているのに、人の登録にはそれがありません。書き方が違うので、意図して分けられていると読めます。
勤め先の店が許可の更新を忘れれば営業できなくなりますが、それは店の話で、本人の登録とは別です。
毎年度の研修は、本人ではなく店の義務
「毎年研修を受けないといけない」という話が、資格の更新と混同されがちです。条文を読むと、義務を負っているのは本人ではありません。
施行規則第147条の11の3第1項(店舗における登録販売者の継続的研修)。
「店舗販売業者は、その店舗において業務に従事する登録販売者に、研修を毎年度受講させなければならない。」
主語は店舗販売業者です。「登録販売者は研修を受けなければならない」ではなく、「事業者が受講させなければならない」と書かれています。
同じ構文の条文が3つあります。薬局は第15条の11の3、店舗販売業は第147条の11の3、配置販売業は第149条の16。それぞれ薬局開設者・店舗販売業者・配置販売業者が主語です。
対象は「その薬局/店舗/区域において業務に従事する登録販売者」です。どこにも勤めていない期間は、この受講させる義務が働く相手がいないことになります。
登録を維持するための研修ではないので、受けなかったからといって登録が消えるわけではありません。義務を果たしていないことになるのは雇っている側です。
働いていない期間に研修を受けていなくても、登録そのものが消えることはありません。
ただし、ここで言えるのはこの条文の受講義務が及ばないというところまでです。働き始めれば、その時点から事業者の義務の対象になります。また、店舗管理者になるルートのように、研修の修了が条件として要る場面は別にあります。「研修を受けなくてよい」という話ではありません。
研修は12時間以上。項目は働く場所で1つ違う
3つの条文はいずれも、研修を「講義により行うものとし、総時間数が十二時間以上であること」としています。
扱う項目は、薬局が7つ、店舗販売業と配置販売業が8つです。
| 研修で扱う事項 | 薬局 | 店舗販売業 | 配置販売業 |
|---|---|---|---|
| 医薬品に共通する特性と基本的な知識 | ○ | ○ | ○ |
| 人体の働きと医薬品 | ○ | ○ | ○ |
| 主な医薬品とその作用 | ○ | ○ | ○ |
| 薬事に関する法規と制度 | ○ | ○ | ○ |
| 医薬品の適正使用と安全対策 | ○ | ○ | ○ |
| リスク区分等の変更があった医薬品 | ○ | ○ | ○ |
| 店舗の管理に関する事項 | — | ○ | — |
| 区域の管理に関する事項 | — | — | ○ |
| その他登録販売者として求められる理念、倫理、関連法規等 | ○ | ○ | ○ |
※ 施行規則第15条の11の3第3項・第147条の11の3第3項・第149条の16第3項より(確認日 2026-10-11)。
最初の5つは試験の5科目とそのままの並びです。試験で一度やった範囲を毎年もう一度扱う形になっています。
そこに加わるのが「リスク区分等の変更があった医薬品」です。市販薬の分類は年度ごとに動くので、この項目だけは毎年中身が変わります。研修が毎年度とされている理由は、ここにあると考えられます。
研修をやるのは、届け出た機関
研修を実施しようとする者は、氏名または名称・住所・法人なら代表者の氏名と、研修の実施場所を、あらかじめ厚生労働大臣に届け出ることになっています(第15条の11の3第2項ほか)。届け出た者が研修実施機関です。
研修実施機関には次の決まりがあります。
- 修了者に修了証を交付する(第4項)
- 受講者から負担金を徴収できるが、実費に相当する額でなければならない(第5項)
- 届出事項に変更が生じたら30日以内に届け出る(第6項)
- 業務の廃止・休止・再開はあらかじめ届け出る(第7項)
- 実施の基準として「正当な理由なく受講を制限するものでないこと」(第3項第3号)
「正当な理由なく受講を制限しない」という基準があるので、特定の会社の社員しか受けられない、という形にはできません。勤務先が変わっても、研修そのものは受けられます。
この研修の修了証は、別のところでも効きます。店舗管理者になるルートのうち、従事期間が通算1年以上の人が使う条件に、継続的研修の修了が入っています(店舗管理者になるには何が必要?)。
辞めるときは消除を申請する。条文の言葉は「退職」ではない
働かなくなったときは、手続きが要ります。ただし条文が使っているのは「退職したとき」という言葉ではありません。
施行規則第159条の10第1項(販売従事登録の消除)。
「登録販売者は、一般用医薬品の販売又は授与に従事しようとしなくなつたときは、三十日以内に、登録販売者名簿の登録の消除を申請しなければならない。」
高知県の案内も、条文と同じ「従事しようとしなくなったとき」という言い回しを使い、死亡・失踪の宣告を受けたときと並べて、30日以内に消除を申請するよう案内しています。
消除を申請するときは、その場で販売従事登録証を返納します(第159条の13第1項)。高知県も消除申請の必要書類に「販売従事登録証(原本)」を挙げています。知事のほうが登録を消除した場合は、5日以内の返納です(同条第2項)。
別の店へ転職するだけなら、登録はそのままです。東京都は「東京都で販売従事登録しましたが、他道府県に勤務することになりました。販売従事登録をし直すのでしょうか?」という質問に、「販売従事登録は一度しかできません。東京都で登録した販売従事登録証を使用することになります」と回答しています。
消除が要るのは、販売に従事しようとしなくなったときです。詳しくは他県で合格して地元で働ける?にまとめています。
休職中や産休・育休のあいだ、あるいは次の勤務先が決まっている転職の合間をどう扱うのかは、法令にも通知にも、確認した3つの自治体の案内にも書かれていません。「従事しようとしなくなった」かどうかの判断が、本人の状況によるためだと考えられます。
この記事ではどちらとも書きません。該当しそうな場合は、登録を受けた都道府県に確認してください。
本人が申請しなくても、消除されることがある
施行規則第159条の10第5項は、都道府県知事が登録を消除しなければならない場合を3つ挙げています。
| 知事が消除する場合 | 中身 |
|---|---|
| 申請・死亡・失踪 | 消除の申請がされたとき、または死亡・失踪の宣告を受けたことが確認されたとき |
| 欠格事由に当たったとき | 法第5条第3号イからヘまでのいずれかに該当するに至ったとき |
| 不正取得が判明したとき | 偽りその他不正の手段により販売従事登録を受けたことが判明したとき |
※ 施行規則第159条の10第5項より(確認日 2026-10-11)。
2つ目の「法第5条第3号イからヘ」の中身は、許可を取り消されて3年を経過していない、登録を取り消されて3年を経過していない、拘禁刑以上の刑を受けて3年を経過していない、薬事に関する法令違反から2年を経過していない、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤の中毒者、心身の障害により業務を適正に行うことができない者として省令で定めるもの、の6つです。
最後の1つは、施行規則第159条の7第4項が「精神の機能の障害により登録販売者の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と定めています。
これに関連して、登録販売者本人・法定代理人・同居の親族は、本人が精神の機能の障害を有する状態となり業務の継続が著しく困難になったときに、遅滞なく登録を受けた都道府県知事に届け出ることとされています(第159条の10第4項)。
消除すると、合格通知書が返ってくる
ここが、更新のない制度で働き直せる理由になっています。
厚生労働省「登録販売者制度の取扱い等について」(医薬発0626第9号・令和8年6月26日)の(7)②ア。
「なお、この場合には、都道府県は登録販売者試験の合格通知書を消除対象者に返却する。合格通知書の代わりに、試験合格に関する内容(登録販売者試験合格の年月、試験施行地都道府県名)及び当該登録販売者の登録を消除した旨の証明書を交付し、又は、返納された販売従事登録証に試験合格に関する内容及び登録を消除した旨を記載して失効済みの処理を行った上で返却しても差し支えない。」
合格通知書の原本は、最初の販売従事登録のときに都道府県が回収します。同じ通知の(5)②は、その理由を「複数の都道府県における販売従事登録の回避のため」と書いています。
消除すると、その回収された合格通知書が本人に戻ります。戻し方は3通りあります。
- 合格通知書そのものを返却する
- 試験合格の年月・試験施行地都道府県名と、登録を消除した旨を書いた証明書を交付する
- 返納された販売従事登録証に同じ内容を記載し、失効済みの処理をして返却する
合格通知書は販売従事登録のときに手元から無くなります。消除したらそれきり、では二度と登録できません。返却の仕組みがあるのはそのためです。
戻ってくる書類は、申請前と同じ合格通知書とは限りません。「消除した」と書かれた証明書や、失効済みの印が押された登録証になることがあります。
もう一度働くときは、新規と同じ申請をやり直す
再登録のための特別な条文はありません。施行規則第159条の7(販売従事登録の申請)は「販売従事登録を受けようとする者」が対象で、初回も再登録も同じ条文です。
通知(5)②は、再登録のときの合格の証明について「いったん登録を消除した者が再度登録を行う場合には、(7)②アの証明書や消除申請により失効済みの処理を行った販売従事登録証等をもって、合格したことを証明する書類として差し支えない」としています。
| 場面 | 合格を証明する書類 |
|---|---|
| 初めて登録する | 合格通知書(原本を回収される) |
| 消除したあと、もう一度登録する | 消除の証明書、または失効済み処理をした販売従事登録証 |
※ 医薬発0626第9号(令和8年6月26日)の(5)②・(7)②アより(確認日 2026-10-11)。
手続きは新規と同じなので、雇用契約書の写しなど勤務先を証明する書類も、戸籍の書類も、もう一度そろえることになります。手数料も改めてかかります。金額は都道府県の条例で決まっていて、大阪府は7,100円です。
再登録の手数料が新規と同じ額かどうかは、条例によるので一律には言えません。申請前に登録先の都道府県で確認してください。
合格そのものは、県の名簿に残り続ける
通知(4)①は、都道府県に試験合格者名簿を備え付けて永年保管すること、販売従事登録された場合や登録が消除された場合はその旨を理由とともに名簿に追記することを求めています。
登録の際には、この名簿と照合して合格の事実を確認します。他県で合格した人については、その県に問い合わせて確認するとされています((5)③)。
東京都のQ&Aも「合格通知書は販売従事登録しないと失効してしまいますか?」という質問に「合格通知書に有効期限はありません」と答えています。
合格が消えないのは、書類を持っているからではなく、県が名簿を永年保管しているからです。合格通知書を紛失した場合も、再発行または合格証明書の発行の手続きが各都道府県に用意されています((4)③)。
合格してから働き始めるまでの流れは合格したらすぐ働ける?にまとめています。
混同しやすい4つを分ける
| 項目 | 誰の手続きか | いつ | やらないとどうなるか |
|---|---|---|---|
| 試験の合格 | — | 期限なし | 消えない。県の名簿に永年保管 |
| 販売従事登録の更新 | 制度として存在しない | ||
| 毎年度の継続的研修 | 事業者が受講させる | 毎年度 | 義務を果たしていないのは事業者。登録は消えない |
| 販売従事登録の消除 | 本人が申請 | 従事しようとしなくなってから30日以内 | 申請は義務。登録証も同時に返納する |
| 再登録 | 本人が申請 | また働くとき | 新規と同じ申請。手数料も改めてかかる |
※ 薬機法・施行規則・医薬発0626第9号より(確認日 2026-10-11)。
まとめ
- 販売従事登録に更新の条文がない。法第36条の8は4項までで更新の項がなく、登録事項にも有効期間がない
- 同じ薬機法でも店の許可は6年ごとに更新(第24条第2項)。人と店で書き方が違う
- 毎年度の継続的研修は事業者の義務。「登録販売者に、研修を毎年度受講させなければならない」と書かれている
- 研修は12時間以上。項目は薬局7つ、店舗販売業と配置販売業は8つで、管理に関する事項が加わる
- 研修を行うのは厚生労働大臣に届け出た研修実施機関。負担金は実費相当額、受講を正当な理由なく制限できない
- 条文の言葉は「退職」ではなく「従事しようとしなくなったとき」。30日以内に消除を申請し、その場で登録証を返納する
- 消除すると合格通知書が返ってくる。証明書や失効済み処理をした登録証の形になることもある
- 再登録は新規と同じ申請。返ってきた証明書を合格の証明として使える
- 休職・産休・転職の合間の扱いは、法令にも通知にも自治体の案内にも書かれていない。登録先の都道府県に確認する
研修中の名札や一人で販売できるかは研修中の登録販売者は一人で販売できる?、受験そのものの条件は受験資格はいらないにまとめています。
情報源:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第24条・第36条の8・第5条、同「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」第15条の11の3・第147条の11の3・第149条の16・第159条の7〜第159条の13、厚生労働省「登録販売者制度の取扱い等について」(医薬発0626第9号・令和8年6月26日)、東京都保健医療局「販売従事登録等の郵送申請について」およびよくあるご質問、大阪府「販売従事登録申請」、高知県「販売従事登録について」(確認日 2026-10-11)