第二種電気工事士はどこまで工事できる?一般用・自家用と認定電気工事従事者の境界
住宅のコンセントと、ビルの事務室にあるコンセント。どちらも100Vなのに、工事に必要な資格が違うことがあります。第二種電気工事士でできる工事は、電圧だけでは決まりません。まず、その設備が法令上どの電気工作物に区分されるかを確認する必要があります。認定電気工事従事者を取れば範囲は広がりますが、第一種の代わりになるわけでもありません。条文で境界を引きます。
結論:範囲は電圧だけでは決まらない
| 持っている資格 | 従事できる電気工事 |
|---|---|
| 第二種電気工事士 | 一般用電気工作物等に係る電気工事 |
| 第二種+認定電気工事従事者 | 上記+自家用電気工作物の簡易電気工事(600V以下・電線路を除く) |
| 第一種電気工事士 | 上記+自家用電気工作物に係る電気工事(特殊電気工事を除く) |
| 特種電気工事資格者 | ネオン工事/非常用予備発電装置工事(種類ごとの認定証) |
※ 電気工事士法第3条・第4条の2、同法施行規則第2条の2・第2条の3より(確認日 2026-10-08)。
電気工事士法第3条第2項は「第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者…でなければ、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業…に従事してはならない」と定めています。
この条文が第二種に与えているのは「一般用電気工作物等」の範囲だけです。第1項は自家用電気工作物について第一種を求めており、第二種は入っていません。
「一般用電気工作物」とは何か
電気事業法第38条第1項は、一般用電気工作物を、構内に設置する電気工作物のうち低圧受電電線路以外の電線路で構外の電気工作物と電気的に接続されていないもの、としています。
電気工事士法のいう「一般用電気工作物等」は、これに小規模事業用電気工作物(同条第3項)を加えたものです。
かみ砕くと、低圧で受電している構内の設備が一般用電気工作物です。一般の住宅、小さな店舗や事務所の多くがここに入ります。
逆に言えば、高圧で受電している建物は、その時点で一般用ではありません。規模が小さくても同じです。
同じ100Vでも、高圧受電のビルの中なら第二種ではできない
ここがいちばん間違えやすいところです。
| 場所 | 電圧 | 区分 | 必要な資格 |
|---|---|---|---|
| 住宅のコンセント・屋内配線 | 100V/200V | 一般用電気工作物 | 第二種でよい |
| 高圧受電のビルで、変圧後の100V配線・負荷設備 | 100V/200V | 自家用電気工作物 | 第二種だけでは不可(簡易電気工事なら認定電気工事従事者) |
扱う電線も作業内容も似ていますが、建物の受電方式が違うだけで必要な資格が変わります。「低圧だから第二種でできる」という読み方は成り立ちません。
判断の順番は、まずその建物の受電方式を確認すること、そのうえで作業対象の設備がどの区分に当たるかを見ることです。電圧はそのあとに効いてきます。
経済産業省の資料「電気工事士等の従事範囲」も、認定電気工事従事者の範囲を「最大電力500kW未満の需要設備のうち600V以下で使用する電気工作物(例えば高圧で受電し低圧に変換されたあとの100V又は200Vの配線、負荷設備等)の電気工事」と説明しています。
同じ資料は、区分の目安を次のように示しています。
- 一般用電気工作物…600V以下で受電、または一定の出力以下の小出力発電設備で受電。例として一般家庭・商店・小規模の事務所などの屋内配線、一般家庭用太陽電池発電設備
- 自家用電気工作物…600Vを超えて受電する需要設備など。例として中小ビルの需要設備(受電は概ね6,600V)
なお同資料には、電気工事士が従事する範囲の外は電気主任技術者の監督の下で工事が実施される、という注記も付いています。
条文から引いた線と、経済産業省の説明資料の線は一致しています。「中小ビルだから小規模」ではありません。受電電圧が600Vを超えていれば自家用電気工作物です。
認定電気工事従事者で広がるのは「簡易電気工事」まで
電気工事士法施行規則第2条の3は、簡易電気工事を「電圧六百ボルト以下で使用する自家用電気工作物に係る電気工事(電線路に係るものを除く。)」と定めています。
法第3条第4項は、簡易電気工事については第1項(第一種が必要という原則)にかかわらず、認定電気工事従事者認定証の交付を受けている者が作業に従事できる、としています。
認定でもできないもの
- 電線路に係るもの — 定義から明文で除かれています
- 600Vを超えて使用するもの — 高圧側の設備は範囲外です
- ネオン工事・非常用予備発電装置工事 — 施行規則第2条の2が定める特殊電気工事で、特種電気工事資格者の認定証が別に要ります
認定を取れば、高圧受電のビルでも100V・200Vの工事に従事できるようになります。ただし何でもできるわけではありません。広がるのは「自家用電気工作物のうち600V以下、電線路を除く」という一区画だけです。認定電気工事従事者は第一種の下位互換ではなく、高圧側の設備や電線路は、認定を取っても第二種のままでは従事できません。
電気工事士法でいう「自家用電気工作物」は500kW未満まで
電気工事士法第2条第2項は、電気事業法の自家用電気工作物から、経済産業省令で定めるものを除いています。施行規則第1条の2が除外しているのは、発電所・蓄電所・変電所・最大電力500キロワット以上の需要設備・送電線路・保安通信設備です。
つまり電気工事士法の資格が関係するのは、最大電力500kW未満の需要設備などに限られます。規模がこれを超えると、電気工事士法の「電気工事」としては扱われません。
ただしこれは、500kW以上の需要設備を誰でも自由に工事してよいという意味ではありません。電気事業法に基づく保安規制や、電気主任技術者による保安管理が別にかかります。経済産業省の資料にも、電気工事士が従事する範囲の外は電気主任技術者の監督の下で工事が実施される、と注記されています。
認定電気工事従事者の範囲が「500kW未満の自家用電気工作物の600V以下」と説明されるのは、この除外規定と簡易電気工事の定義を重ねた結果です。
第二種電気工事士なら、3年の実務経験がなくても認定講習で申請できる
施行規則第4条の2第2項によると、認定を受けられるのは次のような人です。
- 第一種電気工事士試験に合格した者
- 第二種電気工事士であって、免状の交付を受けた後、所定の電気に関する工事に関し3年以上の実務経験を有する者、又は認定電気工事従事者認定講習の課程を修了した者
- 電気主任技術者免状の交付を受けている者で、同様に3年以上の経験または認定講習を修了した者
条文は「3年以上の実務の経験を有し、又は…認定講習の課程を修了したもの」という並びです。実務経験と講習はどちらかでよい形になっています。第二種を取ったばかりでも、講習を修了すれば認定を受けられる建て付けです。
認定証を交付するのは都道府県ではなく経済産業大臣です(法第4条の2第1項)。免状とは交付者が違います。免状の手続きは免状申請はどうする?にまとめています。
資格がなくてもできる作業もある
名前が似ていますが、法律上の扱いが違うものが2つあります。「軽微な工事」はそもそも電気工事に当たらないもの、「軽微な作業」は電気工事のうち資格者でなくても従事できる作業です。
電気工事士法第2条第3項は、政令で定める軽微な工事を「電気工事」から除いています。施行令第1条が挙げているのは、600V以下で使う差込み接続器やソケットにコードを接続する工事、600V以下で使う電気機器や蓄電池の端子に電線をねじ止めする工事、電力量計やヒューズの取り付け・取り外しなどです。
これとは別に、施行規則第2条が軽微な作業を定めています。同条第2項は、一般用電気工作物等について、電線相互の接続や配線器具の取り付けといった列挙された作業以外を軽微な作業としています。ただし露出型点滅器または露出型コンセントを取り換える作業は、列挙から外されています。
「軽微な工事」と「軽微な作業」は別の規定です。前者はそもそも電気工事に当たらないもの、後者は電気工事のうち資格者でなくても従事できる作業です。どちらも範囲が細かく限定されているので、自己判断で広げないでください。
資格を持つことと、電気工事業を営むことは別
資格を取ったら、いずれ自分で仕事を始めたいと考える人もいると思います。ここで確認しておきたいのが、作業する人に求められる資格と、事業者に求められる条件は別だという点です。事業として行う場合は、電気工事士法ではなく別の法律がかかります。
電気工事業の業務の適正化に関する法律第3条は、電気工事業を営もうとする者に登録を求めています。営業所が1つの都道府県内だけなら都道府県知事、2以上の都道府県にまたがるなら経済産業大臣が登録先です。登録の有効期間は5年で、続ける場合は更新が要ります。
自家用電気工事だけを行う場合は登録ではなく、事業開始の10日前までの通知になります(第17条の2)。
建設業法の許可を受けている建設業者には別の扱いがあります。同法第34条は、建設業者には登録の規定を適用しないとしたうえで、電気工事業を営む建設業者を登録電気工事業者とみなし、自家用電気工事のみなら通知電気工事業者とみなすとしています(いわゆる「みなし登録」「みなし通知」)。ただしこの場合も、開始したときは遅滞なく届出または通知が必要です。
注意したいのは、みなし登録でも主任電気工事士の義務は外れないことです。第34条第1項が適用除外にしているのは第2章(登録等)であって、主任電気工事士を定める第19条は第3章(業務)にあります。経済産業省の逐条解説にも、第3章の規定は電気工事業を営む建設業者に対しても適用される、と書かれています。
第二種を取ったばかりでは主任電気工事士になれない
同法第19条第1項は、登録電気工事業者は一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに、第一種電気工事士または「第二種電気工事士免状の交付を受けた後電気工事に関し三年以上の実務の経験を有する第二種電気工事士」を、主任電気工事士として置かなければならないとしています。
ここが実質的な分かれ目です。登録電気工事業者として一般用電気工事を扱う営業所には主任電気工事士が必要で、第二種の場合は免状交付後3年以上の実務経験が条件になります。
同条第2項には、事業者本人(法人なら役員のいずれか)がこの要件を満たしていれば、その人が主に従事する営業所では別に選任しなくてよい、という定めがあります。経済産業省の逐条解説は、これを「一人親方」の場合の特例だと説明しています。ただし特例に乗るための要件そのものが3年の経験なので、免状を取った直後の人は使えません。
整理すると、第二種の免状を取った直後は、原則として本人だけでは主任電気工事士の要件を満たせません。そのため、登録電気工事業者として一般用電気工事を行う営業所を、自分一人ですぐに運営することはできません。自家用電気工事のみを扱う通知電気工事業者など、別の形態まで一律に塞がれるわけではありません。
逐条解説によると、主任電気工事士を置かずに電気工事業を営もうとする者が登録を申請した場合は、登録の欠格事由により登録を拒否されるとされています(第6条第1項第6号)。要件を満たさないまま申請だけ通る、という形にはなりません。
条文が求めているのは「電気工事に関し3年以上の実務の経験」です。電気に関わる仕事すべてが年数に入るとは書かれていません。どの範囲の経験が認められるかは申請先の判断になるので、登録を予定している都道府県または産業保安監督部に確認してください。
ケース別に見る
- 自宅のコンセントを増設したい → 低圧受電の住宅なら一般用電気工作物。第二種の範囲
- 高圧受電のテナントビルで、室内の100Vコンセントを増設する → 自家用電気工作物。第二種だけでは不可。600V以下で電線路でなければ簡易電気工事なので、認定電気工事従事者が要る
- 同じビルのキュービクル内で高圧機器の配線工事を行う → 600V以下ではないので簡易電気工事に当たらない。電気工事士法の対象となる自家用電気工作物の工事であれば、原則として第一種電気工事士の範囲。ネオン工事・非常用予備発電装置工事に当たる場合は特種電気工事資格者を別に確認する
- 店舗のネオン看板を設置する → 自家用なら特殊電気工事。特種電気工事資格者(ネオン工事)の認定証が別に要る
- 第二種を取ったので、認定も取っておきたい → 認定講習の修了でも申請できる。3年待つ必要はない
- 第二種を取ったので独立したい → 登録電気工事業者として一般用電気工事を行うなら、主任電気工事士の要件(免状交付後3年以上の実務経験)がかかる。自分一人で始めるつもりでも同じで、特例に乗るには本人がその要件を満たす必要がある
実際にどの区分に当たるかは、建物の受電方式や設備の構成で変わります。判断に迷う場合は、発注者や元請、所管の産業保安監督部に確認してください。当サイトは条文の枠組みを整理したもので、個別の現場の判定はできません。
まとめ
- できる範囲は電圧だけでは決まらない。先に見るのは、その設備が法令上どの電気工作物に区分されるか
- 第二種免状でできるのは一般用電気工作物等=おおまかには低圧で受電している構内の設備
- 高圧受電の建物は、変圧後の100V部分も自家用電気工作物。第二種だけでは従事できない
- 認定電気工事従事者で広がるのは600V以下の自家用電気工作物(電線路を除く)まで。第一種の代わりではない
- 認定は第二種なら3年の実務経験か認定講習のどちらかで申請できる。交付者は経済産業大臣
- 資格を持つことと電気工事業を営むことは別。登録電気工事業者として一般用電気工事を行う営業所には主任電気工事士が必要で、第二種は免状交付後3年以上の実務経験が条件になる
受験そのものの条件は未経験でも受けられる、合格後の免状申請は免状申請はどうする?、技能試験に落ちた場合は学科免除はいつまで使えるかにまとめています。
情報源:e-Gov 法令検索「電気工事士法」(昭和35年法律第139号)第2条・第3条・第4条の2、同「電気工事士法施行規則」(昭和35年通商産業省令第97号)第1条の2・第2条・第2条の2・第2条の3・第4条の2、同「電気工事士法施行令」(昭和35年政令第260号)第1条、同「電気事業法」(昭和39年法律第170号)第38条、同「電気工事業の業務の適正化に関する法律」(昭和45年法律第96号)第2条・第3条・第17条の2・第19条・第34条、経済産業省「電気工事士等の従事範囲」、同「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説(令和5年11月版)」(確認日 2026-10-08・みなし登録と主任電気工事士は 2026-10-09 に追加確認)