第一種電気工事士と第二種の違いは?受験資格・免状交付の実務経験・定期講習を比較
第一種電気工事士も、受験に制限はありません。誰でも申し込めます。違うのはそのあとで、第一種は試験に合格しただけでは免状を受け取れません。原則として3年以上の実務経験が要ります。さらに免状を取ったあとも5年以内ごとの講習があります。第二種との違いを、受験・免状交付・維持の3段階で確認します。
結論:違いは「合格後」に集中している
| 段階 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 受験の条件 | 制限なし | 制限なし |
| 免状の交付 | 試験に合格すれば受けられる | 合格+原則3年以上の実務経験 |
| 免状の維持 | 定期的な講習の定めはない | 5年以内ごとに講習 |
| 工事できる範囲 | 一般用電気工作物等 | 一般用電気工作物等+自家用電気工作物(500kW未満の需要設備) |
※ 電気工事士法第4条・第4条の3、同法施行規則第2条の4、令和8年度第一種電気工事士上期試験 受験案内より(確認日 2026-10-09)。
「第一種は難しい」と言われるとき、試験の難易度だけが比べられがちです。しかし制度として大きく違うのは合格した後です。第一種と第二種を比べると、実務経験が免状交付の条件になるのは第一種で、維持のための講習が義務づけられているのも第一種だけです。
受験の条件は、どちらにもない
電気工事士法には「受験資格」という語が出てきません(全文検索で0件)。第六条は試験の種類と範囲、実施者を定めるだけで、受ける人の条件は置いていません。
令和8年度第一種電気工事士上期試験の受験案内にも、受験に対して制限や条件はなく誰でも受験できる、と記載されています。
第二種と同じく、年齢・学歴・実務経験を問わずに申し込めます。「第一種は実務経験がないと受けられない」は誤りです。実務経験が出てくるのは、合格したあとの免状交付の場面です。第二種の受験条件は未経験でも受けられるで扱っています。
第一種は、合格しただけでは免状を受け取れない
電気工事士法第4条第3項第1号は、第一種電気工事士免状の交付を受けられる者として「第一種電気工事士試験に合格し、かつ、経済産業省令で定める電気に関する工事に関し経済産業省令で定める実務の経験を有する者」を挙げています。
同条第4項第1号では、第二種電気工事士免状について「第二種電気工事士試験に合格した者」とだけ定められています。
条文の作りがそのまま違います。第二種は「合格した者」、第一種は「合格し、かつ…実務の経験を有する者」です。
第二種免状がないと、一般用の工事にも従事できない
第一種の受験案内には注意書きがあります。第二種電気工事士免状を持っていない人は、第一種電気工事士試験に合格するだけでは一般用電気工作物等の工事に従事することはできない、という内容です。
そのうえで、一般用電気工作物等の工事に従事するには、第二種に合格して第二種免状を取得するか、一般用電気工作物等の工事以外で所定の実務経験を積んで第一種免状を取得する必要があると案内されています。
ここが見落とされやすいところです。第一種の試験に受かっても、免状がなければ第二種の範囲の工事すらできません。そして第二種免状を持たないまま実務経験を積もうとすると、一般用の工事は使えないことになります。
結果として、第一種を目指す人の多くが先に第二種を取る順路になります。制度がそう誘導している、というより、条文と案内を重ねるとそうなる、という構造です。
実務経験の3年は、合格前の期間も数えられる
施行規則第2条の4第2項が定める実務の経験は3年以上の従事です。
経済産業省が公表しているよくある問合せ(FAQ)には、実務経験は試験合格後のみを数えるのかという質問に対して、試験合格の前後を問わないと回答されています。
「第一種に受かってから3年働かないといけない」と考えている人がいますが、そうではありません。すでに積んできた期間も数えられます。第二種を取って数年働いてから第一種を受ける人は、合格した時点で要件を満たしていることがあります。
同じFAQには、試験に合格してから時間が経っていても申請期限はないとも書かれています。あとから条件が整った場合でも申請できる建て付けです。
実務経験として数えられる工事・数えられない工事
施行規則第2条の4第1項は、対象となる工事を「電気に関する工事のうち、令第一条に定める軽微な工事、第二条の二に定める特殊電気工事、電圧五万ボルト以上で使用する架空電線路に係る工事及び保安通信設備に係る工事以外のもの」と定めています。
| 根拠 | 実務経験に含まれないもの |
|---|---|
| 施行規則第2条の4 | 施行令第1条の軽微な工事 |
| 同上 | 特殊電気工事(ネオン工事・非常用予備発電装置工事) |
| 同上 | 電圧5万ボルト以上で使用する架空電線路に係る工事 |
| 同上 | 保安通信設備に係る工事 |
| 経済産業省のFAQ | 電気工作物の維持・管理・運用業務(試験合格による申請の場合) |
※ 上の4つは法令が条文で除いているもの、最後の1つはFAQでの説明です。根拠の種類が違います。
電気に関わる仕事を3年続けた、では足りません。除かれる工事が条文に4つ並んでいるうえ、FAQは維持・管理・運用の業務は当たらないとしています。設備を「つくる・変える」側の作業かどうかが分かれ目だと読めます。
どの工事を数えるかで、提出する書類が変わる
経済産業省が公表している免状交付申請の簡易チェックリストでは、実務経験の中身によって追加の書類が求められています。
- 実務経験に簡易電気工事を含める場合…認定電気工事従事者認定証の写し
- 実務経験に一般用電気工作物の電気工事を含める場合…第二種電気工事士免状の写し
その工事に従事できる資格を持っていたことを示す書類が要る、という作りです。前の節の「第二種免状がないと一般用の工事に従事できない」という注意書きと、きれいに対応しています。
これから実務経験を積む人は、どの範囲の工事に従事できる状態なのかを先に整えておくほうが、あとで数えやすくなります。工事の範囲はどこまで工事できる?にまとめています。
以前の「5年必要」はなぜ変わったのか
経済産業省の公表によると、改正前は大学・高専の電気工学系卒の人は3年以上、それ以外の人は5年以上の実務経験が必要とされていました。
電気工事の施工方法や作業工具の技術進歩による作業の効率化といった環境変化を踏まえ、実態調査と審議会での議論を経て、学歴を問わず一律3年以上とすることが妥当という結論に至り、施行規則が改正されています。
令和3年4月1日以降に交付申請を行う場合は、試験の合格日に関わらず、必要な実務経験が3年以上になりました。
短縮されたのは電気工学系卒以外の人です。電気工学系卒の人は改正前から3年以上なので、変わっていません。
また、これは試験に合格して申請するルートの話です。FAQによると、高圧電気工事技術者試験の合格者は3年以上、電気主任技術者免状の保有者は5年以上が必要で、こちらは改正されていません。
第一種には5年以内ごとの講習がある
電気工事士法第4条の3は「第一種電気工事士は、経済産業省令で定めるやむを得ない事由がある場合を除き、第一種電気工事士免状の交付を受けた日から五年以内に…経済産業大臣の指定する者が行う自家用電気工作物の保安に関する講習を受けなければならない。当該講習を受けた日以降についても、同様とする。」と定めています。
一度受ければ終わりではありません。受けた日からまた5年以内に次を受ける形です。
やむを得ない事由は施行規則第9条の8に6つ挙げられています。海外出張、疾病や負傷、災害、法令による身体の自由の拘束、社会の慣習上または業務の遂行上やむを得ない緊急の用務、そのほか経済産業大臣がやむを得ないと認める事由です。
第二種には、これに相当する講習の定めがありません。法第4条の3の見出しも「第一種電気工事士の講習」です。
第二種は免状を取れば手続きとしてはそこで一段落しますが、第一種は取得後に継続的な義務が付きます。資格を比べるときは、取るまでの費用だけでなく、この差も見ておく部分です。
費用を並べると
| 費用 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 受験手数料(インターネット申込み・非課税) | 11,100円 | 13,000円 |
| 受験手数料(書面申込み・非課税) | 12,500円 | 14,400円 |
| 免状の交付 | 5,300円 | 6,000円 |
| 免状の再交付・書換え | どちらも2,700円 | |
| 5年以内ごとの講習 | なし | あり(指定講習機関の一例で1回9,000円・非課税) |
※ 受験手数料は令和8年度。免状の手数料は「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」第73項が示す標準額で、実際の額は各都道府県の条例によります。
定期講習の受講料は指定講習機関が定めます。経済産業大臣の指定を受けている一般財団法人電気工事技術講習センターは、第一種電気工事士定期講習の受講料を9,000円(非課税)と公表しています。申込みの締切は講習開催日の2週間前(24時)までで、集合講習のほかオンライン講習も実施されています(確認日 2026-10-09)。
9,000円は指定講習機関の一例です。すべての指定講習機関が同じ料金かどうかは確認していません。受講する機関の案内で確認してください。
免状申請の写真は縦40mm×横30mmとされていて、試験用の写真(45mm×35mm)とはサイズが違うとFAQに記載されています。手数料を収入証紙で納める都道府県では、収入印紙は代わりにできないとも書かれています。免状申請の手続きは免状申請はどうする?にまとめています。
工事できる範囲の違い
| 対象 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 一般用電気工作物等 | ○ | ○ |
| 自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備) | × | ○ |
| うちネオン工事・非常用予備発電装置工事 | × | ×(特種電気工事資格者の認定証が別に必要) |
第一種の受験案内には、もうひとつ記載があります。最大電力500kW未満の需要設備を持つ工場やビルなどで、事業者が電気事業法に基づき主任技術者を選任する際、各地域の産業保安監督部長の許可を受ければ、電気主任技術者の免状がなくても、その事業場に勤務している第一種電気工事士免状取得者を主任技術者とすることができる、という内容です(いわゆる許可主任技術者)。
ただしこの手続きは事業者が行うもので、第一種電気工事士免状取得者本人が行うものではない、とも書かれています。
範囲そのものの詳しい境界はどこまで工事できる?で扱っています。ここで押さえておきたいのは、第一種の免状が工事の範囲だけでなく、事業場の選任にも関わり得るという点です。
ケース別に見る
- まったくの未経験で、いきなり第一種を受けたい → 受験はできる。ただし合格しても免状は出ないので、先に第二種を取るほうが現実的
- 第二種で3年以上働いてから第一種に合格した → 合格時点で要件を満たしている可能性がある。合格前の期間も数えられる
- 第一種に合格したが実務経験が足りない → 申請期限はないので、要件を満たしてから申請できる
- 電気設備の点検・保守をしてきた → 維持・管理・運用の業務は実務経験に当たらないとされている。工事に従事した期間で数える
- ネオン工事の経験が長い → 特殊電気工事は対象から除かれている
- 大学で電気工学を学んだ → 改正前から3年。短縮の対象ではない
- 電気主任技術者免状を持っている → 試験合格ルートとは別で、5年以上が必要とされている
- 免状を取ったあと転職して電気から離れた → 講習の義務は第一種電気工事士免状の交付を受けている人にかかる。第二種にはこの定めがない。やむを得ない事由の規定はあるが、個別の事情がどう扱われるかは講習機関や所管に確認する
実務経験として認められるかどうかの最終的な判断は、申請先の都道府県が行います。証明書の様式や添付書類も都道府県で違う部分があるので、申請予定の都道府県の案内で確認してください。
まとめ
- 受験の条件はどちらにもない。法に「受験資格」の定めはなく、受験案内も制限なしとしている
- 第二種は「合格した者」、第一種は「合格し、かつ実務の経験を有する者」。条文の作りが違う
- 第二種免状がないと、第一種に合格しても一般用の工事に従事できない。多くの人が先に第二種を取る理由はここにある
- 実務経験は3年以上。試験合格の前後を問わないので、合格前の期間も数えられる
- 軽微な工事・特殊電気工事・5万V以上の架空電線路・保安通信設備は対象から除かれる。維持・管理・運用の業務も当たらない
- 一般用の工事を数えるには第二種免状の写し、簡易電気工事を数えるには認定証の写しが要る
- 以前は電気工学系卒3年・それ以外5年だったが、令和3年4月1日以降は一律3年。合格日は問われない
- 第一種には5年以内ごとの講習がある。第二種にはこの定めがない
- 費用は受験手数料13,000円・免状6,000円(第二種は11,100円・5,300円)に加え、第一種は5年以内ごとの受講料がかかる(指定講習機関の一例で1回9,000円・非課税)
工事できる範囲の詳細はどこまで工事できる?、免状申請の手続きは免状申請はどうする?、第二種の受験条件は未経験でも受けられるにまとめています。
情報源:e-Gov 法令検索「電気工事士法」(昭和35年法律第139号)第4条・第4条の3・第6条、同「電気工事士法施行規則」(昭和35年通商産業省令第97号)第2条の4・第9条の8、同「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」(平成12年政令第16号)第73項、経済産業省「電気工事士法施行規則の一部改正について」、同「第1種電気工事士免状の交付申請(試験合格者)においてよくあるお問合せ(FAQ)」、同「第1種電気工事士試験合格者の免状交付申請において必要な書類等(簡易チェックリスト)」、一般財団法人電気技術者試験センター「令和8年度第一種電気工事士上期試験 受験案内」、同「令和8年度電気工事士試験の実施日程等のご案内」、一般財団法人電気工事技術講習センター「第一種電気工事士定期講習 受講料・申込み方法」(確認日 2026-10-09)