登録販売者の実務経験はどう数える?80時間・160時間・1,920時間と3ルートの違い
登録販売者の実務経験は、働いた時間をそのまま合計するのではなく、月単位で数えます。1か月あたりの時間が基準に届かない月は、働いていてもその月が入りません。基準は1か月80時間と160時間の2種類があり、どちらを見るかは目指すルートで変わります。さらに、月の基準に届かない人のための時間数の特例が、1,920時間のほかにもあります。厚生労働省の現行通知で、数え方を確認します。
結論:月単位で数える。日割りはない
通知には「従事期間は、月単位で計算することとし、iの場合は1か月に80時間以上従事した場合に、iiの場合は1か月に160時間以上従事した場合に、店舗管理者になるに当たり必要な実務又は業務に従事したものと認められる」とあります。
| 目指すルート | 1か月あたりの条件 | 必要な月数 |
|---|---|---|
| i(2年ルート) | 80時間以上 | 通算24か月以上 |
| ii(1年+研修ルート) | 160時間以上 | 通算12か月以上 |
| iii(管理者経験ルート) | この文では示されていない | 通算12か月以上 |
※ 厚生労働省 医薬発0626第9号(令和8年6月26日・令和8年10月1日から適用)より。確認日 2026-10-07。ルートの中身は店舗管理者になるにはで扱っています。
「80時間と160時間、どちらが正しいのか」という形で迷いやすいところですが、どちらも正しく、見ているルートが違います。この記事では、その数え方のほうを扱います。
何が「従事期間」に入るのか
数える前に、何が対象かを押さえます。通知は次の2つを足したものを「従事期間」と呼んでいます。
- 薬局・店舗販売業・配置販売業で、一般従事者として薬剤師または登録販売者の管理・指導の下に実務に従事した期間
- 登録販売者として業務に従事した期間(店舗管理者・区域管理者としての業務を含む)
前者は合格前の期間です。登録販売者になった日で区切られるわけではありません。働きながら合格した人は、合格した時点で既に数か月分を持っていることになります。
基準に届かない月は、その月ごと入らない
月単位で計算するというのは、次のような意味になります。
- 月90時間働いた月 → ルートiの80時間を超えるので1か月として数える
- 月70時間働いた月 → 80時間に届かないので0か月。10時間足りないぶんを翌月に繰り越す書き方は通知にない
- 月90時間働いた月 → ルートiiの160時間には届かないので、ii を目指すなら0か月
つまり「合計で何時間働いたか」ではなく、基準を超えた月が何回あったかを数えます。これが原則です。
実際に数えてみる
フルタイムで働いた場合
週5日・1日8時間なら、月170時間前後です。80時間も160時間も毎月超えるため、どちらのルートでも働いた月がそのまま積み上がります。12か月でルートii(+研修)、24か月でルートiに届きます。
週3日・1日5時間のパートの場合
週15時間、月およそ65時間です。80時間にも160時間にも届かないため、原則の数え方では何年働いても0か月のままです。この場合に見るのが、次に挙げる時間数の特例になります。
| 勤務期間 | 合計時間 | 1,920時間に到達 |
|---|---|---|
| 12か月 | 780時間 | 届かない |
| 24か月 | 1,560時間 | 届かない |
| 30か月 | 1,950時間 | 到達 |
※ 月65時間で計算した場合。実際の勤務時間で計算してください。
この働き方だと、おおむね2年半で1,920時間に届きます。このとき月単位で従事した期間は30か月あるので、「通算2年以上」の側も同時に満たします。
★注意したいのは、1年ルート(ii)を選んでも早くならないことです。特例の時間数は1年側も2年側も同じ1,920時間なので、月の時間が少ない人にとっては、研修を足しても到達時期が変わりません。
月によって波がある場合
月100時間の月が6か月、月60時間の月が6か月という1年を考えます。
| 数え方 | 1年後 | 2年後(同じ働き方を継続) |
|---|---|---|
| 原則(80時間以上の月を数える) | 6か月 | 12か月=1年 |
| 特例(月単位の期間+合計時間) | 12か月・960時間 | 24か月・1,920時間 |
※ 100×6+60×6=960時間。その2年分で1,920時間。
同じ勤務実績でも、原則で見れば1年、特例で見れば2年という結果になります。通知は「前記の条件を満たさない場合でも…みなして差し支えない」という書き方なので、まず原則で確認し、満たさない場合に特例の条件を確認するという順番になります。
合格をまたいだ場合
一般従事者として月90時間を12か月、合格後に登録販売者として月90時間を12か月なら、合わせて24か月です。どちらも80時間を超えているため、合格日で分断されずルートiに届きます。
★時間数の特例は1,920時間だけではない
月の基準に届かない人のために、合計時間で代替する扱いがあります。よく紹介されるのは1,920時間ですが、現行通知には4種類あり、数字が違います。
| どの要件か | 必要な月単位の期間 | 合計時間 |
|---|---|---|
| i・ii(1年以上又は2年以上) | 通算1年以上/2年以上 | 1,920時間 |
| iii(管理者経験あり) | 通算1年以上 | 1,920時間 |
| 第1類を扱う店舗で薬剤師を管理者にできない場合の3年要件 | 通算3年以上 | 2,880時間 |
| 経過措置(管理者経験がない場合の5年要件) | 通算5年以上 | 4,800時間 |
※ いずれも「月当たりの時間数にかかわらず月単位で従事した期間」が所定の年数以上あることが同時に必要です。時間だけを満たせばよいわけではありません。なお経過措置には、外部研修と同等以上の研修を通算5年以上受講していることという条件も別に付きます。
特例には月数の条件も付いています。短期間に詰め込んで1,920時間に達しても、月単位で数えた期間が1年(または2年)に届いていなければ対象になりません。
★特例の時間数は、原則の月基準×必要月数と対応している
特例の時間数を、それぞれの原則の月基準と必要月数で組み立て直すと、次のようにぴたりと合います。
- i(2年):80時間 × 24か月 = 1,920時間
- ii(1年+研修):160時間 × 12か月 = 1,920時間
- 第1類の3年要件:80時間 × 36か月 = 2,880時間
- 経過措置の5年要件:80時間 × 60か月 = 4,800時間
1年のiiと2年のiで同じ1,920時間が使われているのは、160×12 と 80×24 がどちらも1,920になるためだと読めます。月基準が倍なら必要月数は半分なので、合計時間は一致します。
この対応は通知に書かれているものではなく、当サイトで確認した数字の関係です。ただし、特例が原則と無関係な数字ではなく、月ごとの凹凸をならすための規定だと分かると、自分の勤務表のどこを見ればよいかが決めやすくなります。
「過去5年間のうち」の枠がかかるもの・かからないもの
期間をどこまでさかのぼれるかは、要件ごとに違います。
| 要件 | さかのぼれる範囲 |
|---|---|
| i(2年)・ii(1年+研修) | 過去5年間のうち |
| iii(管理者経験あり) | 過去5年という限定が書かれていない |
| 第1類の3年要件 | 過去5年間のうち |
| 経過措置の5年要件 | 平成21年6月1日以降に限る |
ブランクのある人がまず確認するのはここです。5年より前の勤務しかない場合、i と ii では数えられません。ただし iii にはその限定がないため、過去に店舗管理者または区域管理者を務めた経験があるなら、別に確認する価値があります。
★毎月ほぼ同じ時間なら、月平均32時間が5年枠の目安
i・ii の特例は「過去5年間において合計1,920時間以上」なので、使える月数の上限は60か月です。1,920を60で割ると月32時間になります。
- 毎月40時間 → 48か月で1,920時間。5年の枠に収まる
- 毎月32時間 → ちょうど60か月。枠の限界
- 毎月30時間 → 計算上64か月かかり、5年の枠に収まらない
毎月ほぼ同じ時間働く場合、平均32時間を下回る状態が続くと、5年間で1,920時間に届きません。
この32時間は1か月ごとの最低ラインではありません。5年間の合計から逆算した平均の目安です。特例は「月当たりの時間数にかかわらず」と書かれているので、ある月20時間・別の月60時間といった形でも、月単位の期間と合計時間の条件を満たせば対象になり得ます。月ごとの多い少ないで判断せず、通算で見てください。
偏った働き方は「望ましくない」とされている
令和5年の施行通知(薬生発0331第14号)には、特定の時期に従事期間が集中して他の時期が不足するような「偏りのある状況は望ましくなく、1年間を通じて均等に従事することが望ましい」という記述があります。
これは要件ではなく「望ましい」という書き方です。ただし、繁忙期だけ集中して勤務して時間数を満たす形は、通知の趣旨とは別方向だと示されています。
証明は勤務先が出す。拒むことはできない
期間が足りていても、証明がなければ届け出られません。この証明については、勤務先側に義務が置かれています。
- 薬局開設者・店舗販売業者・配置販売業者は、証明を求められたら速やかに証明を行わなければならない
- 虚偽または不正の証明を行ってはならない
- 証明を行うために必要な記録を保存しなければならない
- 問い合わせに対応できるよう、証明に管理番号を付けることが望ましいとされている
| 何の期間か | 使う様式 |
|---|---|
| 登録販売者としての業務経験 | 別紙様式2 |
| 一般従事者としての実務 | 別紙様式3 |
| 許可申請・変更届に添付する証明書類 | 別紙様式4または5 |
※ iii(管理者経験のルート)の証明書類は、許可の申請や変更の届出をしようとする者、つまり店舗販売業者側が作成して添付することとされています。
退職時に証明をもらっていない場合でも、記録の保存が義務づけられているため、あとから依頼できる建て付けになっています。転職を挟む予定があるなら、在職中または退職時にもらっておくほうが手間は少なくなります。
自分の場合を数える順番
- 対象の期間を書き出す。合格前に一般従事者として働いた期間も入れる。今日から5年前までが範囲(iii を見る場合は範囲の制限なし)
- 月ごとの勤務時間を並べる。給与明細か勤怠記録で、月単位の実働時間を出す
- 原則で数える。80時間以上の月がいくつあるか。160時間以上の月がいくつあるか
- 原則で満たさなければ、特例を確認する。月数を問わず働いた月の数と、その合計時間を出して、1,920時間と比べる
- 証明を依頼する。登録販売者としての期間は別紙様式2、一般従事者としての期間は別紙様式3
勤務先が複数にまたがる場合は、証明も勤務先ごとに必要になります。合算の可否は通知に書かれていないため、届出先の都道府県に確認してください。
通知に書かれていないこと
数え方を細かく詰めていくと、現行通知に答えのない部分が出てきます。調べた範囲では、次の項目は記載がありませんでした。
- 1か月の区切りが暦月なのか、入社日からの1か月なのか
- 同じ月に複数の勤務先で働いた場合、時間を合算できるのか
- 勤務先が廃業している場合の証明の取り方
- 月の途中で入社・退職した月の扱い
通知本文を検索した結果、「暦月」「合算」「廃業」「日割」「端数」はいずれも0件でした(確認日 2026-10-07)。
これらは都道府県が運用で判断している部分です。該当しそうな場合は、届出先となる都道府県の薬務主管課に確認してください。当サイトでは、通知に書かれていないことを書かれているかのように説明しない方針です。
数字が食い違って見える理由
登録販売者の実務経験では、資料によって見える数字が違うことがあります。原因の多くは、制度が複数の通知に分かれていることです。
- 80時間は「登録販売者制度の取扱い等について」(薬生発0331第16号の系統)にあり、施行通知である薬生発0331第14号には出てきません
- 14号の1,920時間は「1年以上」側だけを書いていますが、16号の系統では「1年以上又は2年以上」の両方にかかる書き方になっています
片方だけを読んで「もう一方が誤り」と判断すると、ずれます。数字が合わないときは、別の通知に分かれていないかを先に疑うほうが早く片付きます。
まとめ
- 従事期間は月単位で数える。基準に届かない月は、その月ごと入らない
- 月の基準はルートで違う。ルートi は80時間以上、ルートii は160時間以上
- 従事期間には合格前に一般従事者として働いた期間も含まれる
- 月の基準に届かない人のための特例がある。1,920時間だけでなく、2,880時間・4,800時間もある
- 特例には月数の条件も同時にかかる。時間だけでは足りない
- 特例は「原則を満たさない場合でも」認める建て付け。まず原則で確認し、満たさなければ特例を見る
- 特例の時間数は1年側も2年側も同じ1,920時間。月の勤務時間が少ない人は、1年ルートを選んでも到達が早くならない
- さかのぼれる範囲は要件ごとに違う。i・ii は過去5年、iii には5年の限定がない
- 偏った勤務は要件違反ではないが「望ましくない」とされている
- 証明は勤務先の義務。求められたら速やかに行い、記録も保存しなければならない
- 暦月の区切り・複数勤務先の合算・廃業先の扱いは通知に記載がない。都道府県に確認する
ルートそのものの違いは店舗管理者になるには何が必要か、合格から働き始めるまでの流れは合格したらすぐ働ける?、受験そのものの条件は受験資格はないにまとめています。
情報源:厚生労働省「登録販売者制度の取扱い等について」(医薬発0626第9号・令和8年6月26日。令和8年10月1日から適用。令和5年3月31日付け薬生発0331第16号の改正後全文)、厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」(薬生発0331第14号・令和5年3月31日)(確認日 2026-10-07)