毒物劇物取扱者試験は受けなくてもよい?薬剤師・応用化学の学課と必要単位数
毒物劇物取扱責任者になるのに、試験は必ずしも要りません。薬剤師か、応用化学に関する学課を修了した者なら、試験を受けずに責任者になれます。ただし「化学を勉強した」だけでは足りず、学校の種類ごとに必要な単位数が決まっています。しかもこの基準は令和6年5月30日に改定されたばかりです。
結論:3つのうちどれか1つに当たればよい
毒物及び劇物取締法第8条第1項(毒物劇物取扱責任者の資格)。
「次の各号に掲げる者でなければ、前条の毒物劇物取扱責任者となることができない。
一 薬剤師
二 厚生労働省令で定める学校で、応用化学に関する学課を修了した者
三 都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格した者」
3つは並列です。どれか1つに当たれば責任者になれます。試験は3番目の選択肢で、1番目か2番目に当たる人は受ける必要がありません。
2番目の「厚生労働省令で定める学校」とは何かを定めているのが施行規則第6条です。学校教育法第50条に規定する高等学校、またはこれと同等以上の学校とされています。大学に限られていません。
ここで言えるのは「学校の種類」だけです。高校で化学の授業を受けていれば該当する、という話ではありません。「応用化学に関する学課を修了した」ことが前提で、そのうえで修得した単位数の条件があります。次の項で見ます。
基準は令和6年5月30日に改定された
「応用化学に関する学課」が具体的に何を指すのかは、法令に書かれていません。国の通知が基準を示しています。
現行の基準は、令和6年5月30日付け 医薬薬審発0530第1号「毒物劇物取扱責任者の資格要件について」(厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)です。
それまでは、平成13年2月7日付け 医薬化発第5号の記第1の4が基準でした。この通知の発出に伴って廃止されています。
改定の理由について、通知本文は次のように書いています。
「近年、大学等が設置する学部・学科やカリキュラムが多様化してきたことを踏まえ、従前の基準には当てはまらない学部・学科を卒業した者でも、毒物劇物取扱責任者の業務を遂行する上で十分な知識等を有すると考えられる事例がみられることから、下記のとおり基準を改定いたします。」
学科名が多様になって、昔の学科名リストでは拾えない人が出てきた、ということです。以前に「該当しない」と言われた人でも、今の基準では当たる可能性があります。
改定から日が浅いので、古い基準で書かれた説明がまだ残っていることがあります。確認するときは、令和6年5月30日の通知かどうかを見てください。
学校の種類で、必要な単位数が違う
通知は(1)から(5)まで、学校の種類ごとに基準を分けています。
| 学校の種類 | 根拠条文 | 化学に関する科目の単位 |
|---|---|---|
| 大学・短期大学 旧大学令の大学、旧専門学校令の専門学校を含む | 学校教育法第83条・第108条第3項 | 28単位以上 または必修科目の単位中50%以上 |
| 高等専門学校 | 第115条 | 工業化学科等なら学科名で判断。 判断できない場合は28単位以上 |
| 専門学校 専門課程を置く専修学校 | 第124条・第126条第2項 | 25単位以上 |
| 高等学校 旧中等学校令の実業高校を含む | 第50条 | 25単位以上 |
| 大学院 | 第97条 | (1)のア〜オを準用。 大学と大学院の単位を合算できる |
※ 医薬薬審発0530第1号(令和6年5月30日)より(確認日 2026-10-11)。
単位数が問題になるのは、学科名などで判断できない場合です。そのときの基準が、大学・短大は28単位以上または必修科目の単位中50%以上、高専は28単位以上。専門学校と高校は25単位以上が基準です。
大学については、単位数を数えなくても該当する学部・学科が先に挙げられています。薬学部、理学部・理工学部・教育学部の化学科や理学科(化学専攻のものに限る)・生物化学科など、農学部・水産学部・畜産学部の農業化学科や食品化学科など、工学部の応用化学科や工業化学科・化学工学科などです。
単位数で判断するのは、これらに当てはまらない学科の場合です。
| 学部 | 通知が挙げている学科の例 |
|---|---|
| 薬学部 | 学部そのものが対象 |
| 理学部・理工学部・教育学部 | 化学科、理学科(化学専攻のものに限る)、生物化学科 など |
| 農学部・水産学部・畜産学部 | 農業化学科、農芸化学科、農産化学科、園芸化学科、水産化学科、生物化学工学科、畜産化学科、食品化学科 など |
| 工学部 | 応用化学科、工業化学科、化学工学科、合成化学科、合成化学工学科、応用電気化学科、化学有機工学科、燃料化学科、高分子化学科、染色化学工学科 など |
※ 医薬薬審発0530第1号(令和6年5月30日)(1)のア〜エより(確認日 2026-10-11)。いずれも末尾が「等」で、挙がっている学科がすべてではありません。
理学科は「化学専攻のものに限る」と限定が付いています。学部や学科の名前だけで決まるのではなく、専攻まで見られるということです。
どの行も末尾が「等」なので、ここに書かれていない学科名でも該当する余地があります。逆に言えば、この一覧に自分の学科名が無いことは、該当しない理由にはなりません。そのときに使うのが次の単位数の基準です。
学科名で決まるとは限らない
通知には、県の案内では省かれていることのある一文があります。
通知は、科目名に「化学」の文字が入っていない場合について、こう書いています。
「講義内容等から総じて化学に関する科目と認められる場合には、単位数に算入して差し支えないこと」
名称だけで分からないときは「シラバスやカリキュラムにより授業内容を確認すること」とされています。
通知が挙げる「化学に関する科目」の分野は、工業化学、無機化学、有機化学、化学工学、化学装置、化学工場、化学工業、化学反応、分析化学、物理化学、電気化学、色染化学、放射化学、医化学、生化学、バイオ化学、微生物化学、農業化学、食品化学、食品応用化学、水産化学、化学工業安全、化学システム技術、環境化学、生活環境化学、生活化学、生活化学基礎、素材化学、材料化学、高分子化学などです。
さらに、有機構造解析、無機材質学、マテリアル工学、高分子合成、食品工学、代謝生物学、機器分析、環境評価、環境リスク管理なども挙げられています。後半には「化学」の字が入らない科目名が並んでいます。
対象は「講義、実験及び演習」です。
科目名に「化学」が入っていないから数えられない、とは限りません。機器分析や環境リスク管理のような科目も、通知に名指しで挙がっています。
自分で数えて足りないと判断する前に、成績証明書の科目を通知の分野と照らしてみるほうが確実です。判断できないものはシラバスで中身を見ることになります。
どれにも当てはまらないときは、国に照会できる
通知の「記」の部分。
「(1)から(5)のいずれにも該当しない場合、又は判断に迷う事例については」、応用化学に関する学課を修了したことを証する書類と授業内容が確認できる書類を必要に応じて添付したうえで、「個別に厚生労働省医薬局医薬品審査管理課化学物質安全対策室宛て照会してください」。
この照会は、本人ではなく届出を受ける側に向けて書かれています。通知のあて先は各都道府県・各保健所設置市・各特別区の衛生主管部(局)長です。
通知は続けて「毒物劇物取扱者試験を受けるように指導してください」としています。該当しないと分かった時点で、試験のほうへ案内する流れです。
添付を求められているのは、学課を修了したことを証する書類と、授業内容が確認できる書類の2種類です。卒業証明書だけでは足りず、何を習ったかが分かるものが要ることになります。
自分の学科が微妙だと思ったときに、いきなり諦めて試験を申し込む必要はありません。判断に迷う事例は国へ照会する道が用意されています。
ただし照会するのは自治体なので、本人がするのは自治体への相談です。卒業証明書や成績証明書、シラバスを用意して問い合わせる形になります。
該当するかどうかを決めるのは、自分ではない
通知のあて先は、各都道府県・各保健所設置市・各特別区の衛生主管部(局)長です。文面も「確認してください」「指導してください」と、自治体に向けた指示で書かれています。
そもそも、責任者を置いたことを届け出るのは本人ではありません。法第7条第3項は「毒物劇物営業者は、毒物劇物取扱責任者を置いたときは、三十日以内に、その製造所、営業所又は店舗の所在地の都道府県知事にその毒物劇物取扱責任者の氏名を届け出なければならない」としています。届出の義務を負うのは雇う側です。
成績証明書を見て自分で単位を数えることはできますが、その判定が通るかを決めるのは届出を受ける自治体です。先に就職や配置が決まってから、書類を揃えて判定されるという順序になります。
だから「自分は該当するはずだから試験は受けない」と決める前に、証明書を取り寄せて自治体に相談しておくほうが安全です。該当しないと分かってから試験を探すと、次の試験まで1年近く空くことがあります。試験は都道府県ごとに年1回のところが多いためです。
資格があっても「免許証」は出ない
試験を受けずに該当した場合、何を持って資格を示すのかが問題になります。
神奈川県は、毒物劇物取扱責任者には医師免許証や自動車の運転免許証のような免許(ライセンス)はなく、個人に対して責任者であるという証明書の発行もないと案内しています。
資格を示す書類は、どのルートで該当したかによって変わります。
| 該当するルート | 資格を証明する書類 |
|---|---|
| 薬剤師 | 薬剤師免許証 |
| 応用化学に関する学課を修了した者 | 卒業証明書または成績証明書 |
| 毒物劇物取扱者試験に合格した者 | 合格証書 |
※ 神奈川県「毒物劇物取扱者試験」のよくある質問より(確認日 2026-10-11)。
学課修了で該当する人は、卒業した学校から証明書を取り寄せるところから始まります。単位数で判断される場合は成績証明書が要ります。発行に日数がかかるので、就任が決まってから動くと間に合わないことがあります。
資格そのものを示すカードや登録証がない点は、登録販売者と違うところです。登録販売者は都道府県に登録して販売従事登録証の交付を受けます。
試験に合格したルートの場合、神奈川県は合格証書を交付しています。紛失しても合格証の再発行は行っていませんが、合格証明書を発行します。証明願に記入して送る方式で、郵送を希望する場合は110円切手を貼った長形3号の返信用封筒を同封するよう案内されています。
氏名が変わった場合について、神奈川県は「氏名変更の手続きは必要ありません」としています。ただし、変更後に責任者になる場合は届出先の自治体に問い合わせるよう添えられています。
合格証そのものは再発行されず、代わりに合格証明書が出る、という扱いです。名簿に記録が残っているので証明はできる、という形になっています。
学課修了のルートには、そもそも県が発行する書類がありません。証明する相手は卒業した学校です。学校が無くなっていたり、古い記録が残っていなかったりすると、証明の手間が変わります。
資格があっても、責任者になれない場合がある
法第8条第2項は、次の人は責任者になれないとしています。
- 18歳未満の者
- 心身の障害により毒物劇物取扱責任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
- 毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して3年を経過していない者
薬剤師でも学課修了でも試験合格でも、第2項に当たれば責任者にはなれません。資格を得ることと、責任者に就くことは別の条件です。
とくに年齢は、試験のほうには制限がありません。神奈川県は受験資格を「学歴、年齢及び経験は問いません」としています。18歳未満でも受験して合格できますが、責任者に就けるのは18歳からです。
以前に「該当しない」と言われた人は
令和6年5月30日の通知には、それ以前の判断をどう扱うかについての記載がありません。経過措置や再判定に関する項目は置かれていません。
改定の理由が「従前の基準には当てはまらない学部・学科を卒業した者でも十分な知識等を有すると考えられる事例がみられる」ことだった以上、旧基準で外れた人が新基準では入る、ということは起こり得ます。
いつの時点で、どの基準で判断されたのかによって結論が変わる可能性があります。古い判断を前提にしている場合は、改めて自治体に相談する価値があります。ただし通知に書かれていない扱いなので、ここでは「相談する余地がある」までにとどめます。
試験を受けないと決める前に確認すること
| 確認する項目 | 見るもの |
|---|---|
| 学校の種類 | 大学・短大/高専/専門学校/高校/大学院のどれか。種類で必要単位数が変わる |
| 学部・学科名 | 大学なら通知の(1)ア〜エに挙がっているか。挙がっていれば単位数を数えなくてよい |
| 化学に関する科目の単位数 | 成績証明書。28単位または25単位。「化学」の字がない科目も内容次第で算入できる |
| 必修科目の割合 | 大学は、必修科目の単位中50%以上という別の基準もある |
| 大学院の単位 | 大学の単位と合算できる |
| 判断に迷うとき | 自治体に相談する。自治体から国へ照会する道がある |
| 年齢・欠格事由 | 法第8条第2項。資格があっても責任者になれない場合がある |
※ 医薬薬審発0530第1号(令和6年5月30日)および毒物及び劇物取締法より(確認日 2026-10-11)。
まとめ
- 責任者になれるのは薬剤師/応用化学に関する学課を修了した者/試験合格者の3つ。試験は3番目の選択肢
- 学校は「高等学校又はこれと同等以上」(施行規則第6条)。大学に限られない
- 基準は令和6年5月30日に改定された。従前の平成13年の基準は廃止されている
- 学科名などで判断できない場合、大学・短大は28単位以上または必修科目の単位中50%以上、高専は28単位以上という基準がある。専門学校・高校は25単位以上が基準。大学院は大学の単位と合算できる
- 大学は、通知に挙がった学部・学科なら単位数を数えなくてよい
- 「化学」の字が入らない科目でも、講義内容から認められれば単位に算入できる
- どれにも当てはまらない、判断に迷う事例は国へ照会する道がある
- 毒物劇物取扱責任者としての免許証は発行されない。資格を示す書類は、薬剤師免許証・卒業証明書等・試験の合格証書など、該当する資格要件によって異なる
- 18歳未満は責任者になれない。ただし受験そのものに年齢制限はない
情報源:e-Gov法令検索「毒物及び劇物取締法」第7条・第8条、同「毒物及び劇物取締法施行規則」第6条、厚生労働省「毒物劇物取扱責任者の資格要件について」(医薬薬審発0530第1号・令和6年5月30日)、神奈川県「毒物劇物取扱者試験」(確認日 2026-10-11)