潜水士

潜水士試験に実技はある?泳げなくても受験できるのか|試験と免許交付は別の条件

潜水士免許試験に実技試験はありません。法令が学科試験だけで行うと定めていて、試験協会の案内も受験資格は不要としています。ただし「試験に受かれば誰でも免許をもらえる」という話ではありません。試験に合格することと、免許が交付されることは別の段階で、免許のほうには年齢の条件と、業務を適切に行えるかどうかの定めがあります。

結論:3つの段階を分けて見る

段階条件根拠
受験学科試験4科目のみ。実技試験はない。受験資格も不要高気圧則第54条
試験協会の案内
免許交付18歳以上であること。業務を適切に行えるかの定めは別にある高気圧則第52条・第53条・第53条の2
個別の判断障害を補う手段や治療等の状況を考慮しなければならない。作業を限定した条件付きの免許もある高気圧則第53条の3・第53条の4

※ 高気圧作業安全衛生規則および公益財団法人 安全衛生技術試験協会の案内より(確認日 2026-10-12)。

編集部の判断

「泳げないと免許は取れない」とも「試験に受かれば誰でももらえる」とも言えません。受験の段階と、免許の段階と、個別の判断の段階が分かれているのが実際の作りです。

試験は学科だけ。法令にそう書いてある

公式の記載

高気圧作業安全衛生規則第54条(試験科目等)。

「潜水士免許試験は、次の試験科目について、学科試験によつて行なう。
一 潜水業務
二 送気、潜降及び浮上
三 高気圧障害
四 関係法令」

確認した事実

労働安全衛生法第75条第2項は、免許試験を「学科試験及び実技試験又はこれらのいずれかによつて行う」としています。実技を課すかどうかは免許の種類ごとに決まる仕組みで、潜水士は学科だけを選んでいます。

実際、試験協会が示す実技試験の手数料の一覧に並ぶのは、クレーン・デリック運転士、移動式クレーン運転士、揚貨装置運転士、普通ボイラー溶接士、特別ボイラー溶接士です。潜水士は入っていません。

4科目40問を4時間通しで解く

試験科目出題数配点
潜水業務10問30点
送気、潜降及び浮上10問25点
高気圧障害10問25点
関係法令10問20点
合計40問100点

※ 安全衛生技術試験協会「潜水士の紹介」より(確認日 2026-10-12)。

確認した事実

試験時間は12時30分から16時30分までの4時間です。協会は、令和3年6月に実施する試験から開始時刻を変更し、4時間通して(休憩なし)実施するとしています。

出張特別試験も4時間通しですが、開始時刻は地区ごとに定められます。

科目別の配点は同じではありません。潜水業務が30点で、関係法令が20点です。

編集部の判断

法令が定めているのは科目名までで、出題数と配点は協会の案内に出ています。配点に差があるので、どの科目も同じ重さではありません。

4時間休憩なしという形は、試験そのものより先に体勢の問題になります。申し込む前に知っておく部分です。

合格には、科目ごとの足切りがある

公式の記載

試験協会の「試験合格基準」より。

「学科試験 科目ごと(第一種衛生管理者試験の科目のうち範囲が分かれているものについては範囲ごと)の得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上であること。」

確認した事実

合計60%だけでは足りません。科目ごとに40%以上という条件が別にかかります。

潜水士の配点に当てはめると、科目ごとの最低点は次のとおりです。

試験科目配点40%以上なら
潜水業務30点12点以上
送気、潜降及び浮上25点10点以上
高気圧障害25点10点以上
関係法令20点8点以上
合計100点合計は60点以上

※ 配点は試験協会「潜水士の紹介」、合格基準は同「試験合格基準」より、当サイトが計算したもの(確認日 2026-10-12)。

編集部の判断

たとえば関係法令だけが7点(35%)で、ほかの3科目が満点だったとします。合計は87点で60%を超えますが、関係法令が40%に届いていないので合格になりません。

配点がいちばん小さい関係法令でも、落とせない科目です。合計点だけを目安にすると、この条件を外します。

受験資格は不要。ただし本人確認証明書が要る

公式の記載

試験協会「潜水士の紹介」より。

「2.受験資格
不要。ただし、本人確認証明書の添付が必要です。」
「3.免除科目 なし」

確認した事実

学歴も実務経験も泳力も、受験の条件には出てきません。免除される科目もありません。

高気圧作業安全衛生規則を見ても、潜水士免許について受験資格を定めた条文は見当たりませんでした。同じ規則の高圧室内作業主任者免許のほうは、第47条が「高圧室内業務に二年以上従事した者であつて、高圧室内作業主任者免許試験に合格したもの」としています。

申請時には証明写真(2.4cm×3.0cm)も要ります。

編集部の判断

同じ規則の中で、片方は2年以上の従事を求め、潜水士のほうは求めていません。働いたことがなくても受けられるということです。

ここで注意したいのは、第52条が定めているのは「免許を与える対象者」であって、受験資格ではないことです。受験資格がないことの確認は、試験協会の案内のほうで取れます。

免許を受けられるのは18歳から

確認した事実

高気圧則第53条は、潜水士免許に係る法第72条第2項第2号の厚生労働省令で定める者を「満十八歳に満たない者」としています。18歳未満には免許が与えられません。

一方、受験のほうに年齢の制限は見当たりませんでした。試験協会も受験資格を不要としています。

免許を与えるのは都道府県労働局長です(第52条)。試験に合格した者と、その他厚生労働大臣が定める者が対象とされています。

編集部の判断

18歳未満でも受験して合格はできますが、免許はその年齢に達してから、ということになります。合格と免許が別の段階であることが、年齢のところにも出ています。

免許の段階にある、もう一つの定め

ここが「泳げないと取れないのか」という疑問に関わる部分です。

公式の記載

高気圧則第53条の2。

「潜水士免許に係る法第七十二条第三項の厚生労働省令で定める者は、身体又は精神の機能の障害により当該免許に係る業務を適正に行うに当たつて必要な潜降及び浮上を適切に行うことができない者とする。」

確認した事実

この条文が指しているのは、労働安全衛生法第72条第3項です。同項は、心身の障害により業務を適正に行うことができない者として省令で定めるものには、免許を「与えないことがある」としています。

「与えない」ではありません。「与えないことがある」という書き方です。

注意

この定めは免許の段階のものです。受験を制限するものではありません。また、文面は「潜降及び浮上を適切に行うことができない者」であって、泳力の有無や障害の有無そのものを基準にしていません。

自動的に不許可にはならない

第53条の2に当たると認められた場合でも、そこで終わりではありません。続く2つの条文が手順を定めています。

公式の記載

高気圧則第53条の3(障害を補う手段等の考慮)。

「都道府県労働局長は、潜水士免許の申請を行つた者が前条に規定する者に該当すると認める場合において、当該者に免許を与えるかどうかを決定するときは、当該者が現に利用している障害を補う手段又は当該者が現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮しなければならない。」

公式の記載

高気圧則第53条の4(条件付免許)。

「都道府県労働局長は、身体又は精神の機能の障害がある者に対して、その者が行うことのできる作業を限定し、その他作業についての必要な条件を付して、潜水士免許を与えることができる。」

確認した事実

第53条の3は「考慮しなければならない」と書かれています。考慮するかどうかは任意ではありません。

第53条の4は、作業を限定するなどの条件を付けて免許を与える道を用意しています。与えるか与えないかの二択ではありません。

確認した事実

免許を与えないこととする場合の手続きも、法律に定めがあります。労働安全衛生法第72条第4項です。

都道府県労働局長は、第3項の規定により免許を与えないこととするときは、あらかじめ、当該免許を申請した者にその旨を通知し、その求めがあつたときは、都道府県労働局長の指定する職員にその意見を聴取させなければならないとされています。

編集部の判断

整理すると、免許の段階はこういう順序です。

  • 第53条の2に当たるかどうかを見る
  • 当たると認める場合は、補う手段や治療の状況を考慮しなければならない(第53条の3)
  • 作業を限定するなどの条件付きで与えることもできる(第53条の4)
  • 与えないこととするときは、あらかじめ通知し、求めがあれば意見を聴取する(法第72条第4項)

意見の聴取は、本人から求めがあったときに行われるものです。通知を受けた側が何も求めなければ、この手続きは発生しません。

「障害があるから不許可」という単純な作りにはなっていません。個別に見ることが条文で求められています。

そもそも、どんな仕事に要る免許か

確認した事実

労働安全衛生法施行令第20条第9号は、就業制限に係る業務の一つとして「潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務」を挙げています。

試験協会は、潜水士が水中での土木作業やサルベージ作業、水産物採取、海洋調査などで活躍していると紹介しています。

編集部の判断

条文の言葉は、潜水器を用い、かつ、送気または給気を受けて、です。両方がそろう業務が対象になります。この範囲については別の記事で詳しく見ます。

自分の場合はどこで引っかかるのか

ここまでの3段階を、よくある状況に当てはめます。

状況受験免許
泳ぐのが得意ではない受けられる。泳力は受験の条件に出てこない審査されるのは泳力ではなく、業務に必要な潜降・浮上を適切に行えるか
潜水の経験がまったくない受けられる。実務経験は求められない経験の有無は免許の条件に出てこない
18歳未満受けられる。年齢の制限は見当たらない受けられない(高気圧則第53条)
身体または精神の機能に障害がある受けられる第53条の2に当たるかを見たうえで、補う手段や治療の状況を考慮しなければならない。条件付きの免許もある
レジャーのダイビングで使いたい受けられる交付される。ただし免許が必要になるのは施行令第20条第9号の業務

※ 高気圧作業安全衛生規則・労働安全衛生法・同施行令および試験協会の案内から整理したものです(確認日 2026-10-12)。個別の判断は都道府県労働局が行います。

編集部の判断

受験の段階でつまずく条件は、ほとんどありません。学歴も経験も年齢も泳力も問われないためです。

条件が出てくるのは免許の段階で、そこも「該当したら不許可」ではなく、個別に見たうえで条件を付けて与える道があるという作りです。自分が当てはまるかどうか判断に迷う場合は、申請先の都道府県労働局に確かめることになります。

申し込みには締切と定員がある

確認した事実

提出先は各安全衛生技術センターで、受験を希望するセンターに提出します。受付期間は申請の方法で違います。

  • オンライン申請:試験日の2か月前(0時00分00秒)から、試験日の14日前(23時59分59秒)まで
  • 郵送:第1受験希望日の2か月前から14日前の消印まで。簡易書留で送る
  • センター窓口へ持参:2か月前から、センターの休業日を除く2日前まで

協会は、これらに共通して「受付期間中であっても定員に達した場合は受付を終了いたします」としています。

休業日は土曜日、日曜日、国民の祝日・休日、年末年始(12月29日〜1月3日)、協会の設立記念日(5月1日)です。

編集部の判断

締切が守られていても、定員で先に締め切られることがあります。期限だけを見て直前に動くと間に合わないことがある、という作りです。

窓口持参だけは2日前まで受け付けますが、休業日を除いた2日前なので、週末を挟むと実際の余裕はもっと短くなります。

確認した事実

試験を行うのは各地の安全衛生技術センターです。協会のサイトに並ぶのは、北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州の7センターと、関東の東京試験場、近畿の大阪試験場です。このほかに出張特別試験があります。

受験票は原則として申請先のセンターや試験場から郵送されます。届かないときの連絡期限も決まっていて、オンライン申請なら試験日の2日前(休業日を除く)まで、書面で申請した場合は郵送後10日過ぎても届かないときに早いほうの試験日の2日前までです。出張特別試験は3日前(休業日を除く)までとされています。

協会は「受験票を発行した後は試験日の変更及び試験手数料の返還はできません」としています。

確認した事実

実施回数は会場でまったく違います。令和8年4月から令和9年3月までの潜水士免許試験の日程は次のとおりでした。

会場年間の回数実施日
関東センター(市原)6回4/23・6/3・7/16・9/24・12/14・2/8
関東センター(東京試験場)6回4/23・6/3・7/16・9/24・12/14・2/8
北海道センター5回4/23・7/16・9/24・12/14・2/8
近畿センター(大阪試験場)5回4/23・7/16・9/24・12/14・2/8
九州センター5回4/23・6/3・7/16・9/24・2/8
東北センター4回4/23・7/16・9/24・12/14
中部センター4回4/23・7/16・12/14・2/8
中国四国センター4回4/23・7/16・9/24・2/8
近畿センター1回6/3 のみ

※ 安全衛生技術試験協会「潜水士の日程」(令和8年4月〜令和9年3月)より。2月8日は令和9年(確認日 2026-10-12)。

編集部の判断

関東の2会場は年6回ですが、近畿センターは年1回(6月3日)だけです。同じ近畿でも大阪試験場は5回あるので、「近畿で受けられるのは年1回」ということではありません。会場単位で見る必要があります。

定員に達すると受付期間中でも締め切られる仕組みなので、年1回しかない会場では、逃すと次が1年後になります。

実施日は曜日もばらばらです。4月23日・7月16日・9月24日は木曜日、6月3日は水曜日、12月14日と2月8日は月曜日でした。どの日も平日なので、働きながら受けるなら休みを取ることになります。

受験票が発行されたあとは日程を動かせません。申し込む前に予定を確かめておくことになります。

まとめ

  • 実技試験はない。高気圧則第54条が学科試験だけで行うと定めている
  • 法第75条第2項は学科と実技のいずれか、または両方で行うとしており、潜水士は学科だけを選んでいる。実技試験の手数料一覧にも潜水士は入っていない
  • 試験は4科目40問・100点。配点は潜水業務30点/送気、潜降及び浮上25点/高気圧障害25点/関係法令20点
  • 試験時間は12時30分〜16時30分の4時間通し(休憩なし)
  • 受験資格は不要。ただし本人確認証明書の添付が要る。免除科目もなし
  • 免許を受けられるのは18歳から(高気圧則第53条)。受験そのものに年齢の制限は見当たらない
  • 免許の段階に「潜降及び浮上を適切に行うことができない者」という定めがある(第53条の2)。ただし法第72条第3項は「与えないことがある」
  • 障害を補う手段や治療の状況を考慮しなければならない(第53条の3)。条件付きの免許もある(第53条の4)
  • 与えないこととするときはあらかじめ通知し、求めがあれば意見を聴取する(法第72条第4項)
  • 申込は各安全衛生技術センターへ。定員に達すると受付期間中でも締め切られる

情報源:e-Gov法令検索「高気圧作業安全衛生規則」第52条〜第54条、同「労働安全衛生法」第72条・第75条、同「労働安全衛生法施行令」第20条、公益財団法人 安全衛生技術試験協会「潜水士の紹介」、同「試験手数料」(確認日 2026-10-12)

この記事を書いた人

Web制作・サイト運用歴20年

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