潜水士免許はどんな仕事に必要?素潜り・スキューバ・レジャーダイビングの違い
潜水士免許が要るのは、法令が定める2つの要件を両方満たす「業務」です。潜水器を用いること、そして空気圧縮機などによる送気かボンベからの給気を受けること。厚生労働省の資料は素潜りなどを除き免許を持つ者にさせなければならないとしています。趣味で潜る場合の扱いも含めて、ケースごとに見ていきます。
結論:2つの要件を両方満たす業務が対象
労働安全衛生法施行令第20条(就業制限に係る業務)第9号。
「潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務」
条文は「潜水器を用い、かつ」とつないでいます。2つの要件は両方そろう必要があります。
- 潜水器を用いること
- 空気圧縮機・手押しポンプによる送気、またはボンベからの給気を受けること
高気圧作業安全衛生規則第12条は「事業者は、潜水士免許を受けた者でなければ、潜水業務につかせてはならない」と定めています。
「水に潜る仕事なら免許が要る」ではありません。空気の供給を受けているかどうかが条文の分かれ目になっています。
もうひとつ、条文は「業務」と書いています。この語の扱いは後の項で見ます。
素潜りは、この要件に当たらない
厚生労働省「外国において潜水業務の資格を有する方の潜水士免許付与の手続」(令和元年12月・事業者向けマニュアル)より。
「事業者は、潜水業務を行わせるときは、素潜りなどを除き、潜水士免許をもつ一定の知識がある者にさせなければなりません。」
素潜りは、送気も給気も受けません。施行令第20条第9号の2つ目の要件を満たさないことになります。
厚生労働省の資料も「素潜りなどを除き」と書いています。
魚介類を採る仕事でも、素潜りなら施行令第20条第9号の業務には当たらないと読めます。免許の有無で分かれるのは、潜る深さや目的ではなく、空気の供給方法です。
ただし、素潜りが安全という意味ではありません。この条文が扱っているのは免許の要否だけです。
タンクを背負う方式も対象に入る
「ボンベからの給気」が何を指すのかは、別の条文の書き分けから分かります。
高気圧則第34条は、点検すべき器具を定めるために潜水業務を3つに分けています。
- 空気圧縮機又は手押ポンプにより送気して行う潜水業務
- ボンベ(潜水作業者に携行させたボンベを除く)からの給気を受けて行う潜水業務
- 潜水作業者に携行させたボンベからの給気を受けて行う潜水業務
3つ目が、タンクを身につけて潜る方式です。法令は「スクーバ」「スキューバ」という語を使わず、潜水作業者に携行させたボンベからの給気と書いています。
| 潜る方法 | 送気・給気 | 施行令第20条第9号 |
|---|---|---|
| 空気圧縮機・手押しポンプから送気 | あり | 当たる |
| 船上などのボンベから給気 | あり | 当たる |
| 背負ったボンベから給気 | あり | 当たる |
| 素潜り | なし | 当たらない |
※ 労働安全衛生法施行令第20条第9号と高気圧作業安全衛生規則第34条の書き分けから整理したもの(確認日 2026-10-13)。
条文は「業務」と書いている
労働安全衛生法第61条第1項は、事業者は政令で定める業務について、免許を受けた者や技能講習を修了した者その他省令で定める資格を有する者でなければ当該業務に就かせてはならない、としています。
同条第2項は「前項の規定により当該業務につくことができる者以外の者は、当該業務を行なつてはならない」と定めています。事業者だけでなく、本人の側にも書かれています。
同条第3項は、業務に従事するときは「これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない」としています。
労働安全衛生法第2条は、この法律の「労働者」を労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業・事務所に使用される者と家事使用人を除く)とし、「事業者」を事業を行う者で労働者を使用するもの、と定めています。
第61条は第1項が事業者に、第2項が本人に向けられています。第3項の免許証の携帯も、本人に向けた義務です。
一方で、この法律は労働者と事業者を定義して組み立てられています。自営で潜る人や一人親方がどう扱われるかは、条文の文面からは一義的に読み取れませんでした。当てはまりそうな場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
趣味で潜る場合の扱い
宮古労働基準監督署「レジャーダイビング業における安全衛生対策等について」(平成26年1月29日)より。
潜水士免許について「労働災害の防止など労働者の保護を目的とする免許であり、事業者はこの免許を持たない者を潜水作業に従事させてはならない(ただし、これは“業務として”従事する者に関する規制であり、レジャー(趣味や遊び)などの目的で自発的に潜る者には適用されません)。」
この記載は平成26年(2014年)の労働基準監督署の講話資料にあるものです。確認日時点でこの区別を示した新しい資料は見つけられませんでした。施行令第20条第9号が「業務」と書いている構造は変わっていませんが、個別の判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
同じタンクを背負って同じ海に潜っても、趣味で潜るのか、仕事として潜るのかで扱いが変わる、という整理になります。
指導する側は、仕事として潜っている
厚生労働省のマニュアルの題は「外国人ダイビング指導員に日本で潜水業務を行わせる事業者のためのマニュアル」です。ダイビング指導員が行う潜水を、潜水業務として扱っています。
宮古労働基準監督署の資料も、ダイビング業の業務内容として潜水・客の送迎・機器の運搬・操船を挙げ、県内のダイビング業で休業4日以上の労働災害が発生していることを示しています(平成11年〜平成25年の集計)。事故の型は激突・挟まれ・交通事故がそれぞれ13%、潜水病が8%などです。
客にとっては趣味の時間でも、案内する側にとっては仕事です。レジャーダイビングという言葉は客の側から見た呼び方で、指導員が潜ることまでレジャーになるわけではありません。
労働災害の統計に潜水以外の項目(交通事故・運搬・操船)が並ぶのも、これが業務として行われていることを示しています。
免許は「潜れる能力」の証明ではない
同じマニュアルより。
「潜水士免許は、ダイビングの能力や他の人を指導する能力を証明するものではありません。」
試験は学科4科目だけで、実技がありません。厚生労働省の資料も、ダイビングの能力や指導の能力を証明するものではない、と書いています。
潜る技術や指導の力量は、民間のダイビング指導団体の資格が担う部分になります。免許と民間資格は別のもので、どちらかがあれば他方が要らない、という関係ではありません。
外国の資格を持つ人には別のルートがある
高気圧則第52条は、免許を与える対象を「潜水士免許試験に合格した者」と「その他厚生労働大臣が定める者」の2つとしています。
この2つ目の中身は、高圧室内作業主任者及び潜水士免許規程(昭和47年労働省告示第130号)第2条が定めており、外国において潜水士免許を受けた者に相当する資格を有し、かつ潜水士免許を受けた者と同等以上の能力を有すると認められる者(潜水業務の安全及び衛生上支障がないと認められる場合に限る)とされています。
運用は、基安労発1220第1号(令和元年12月20日・厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)が示しています。基本的な考え方は「日本語を解さないために潜水士免許試験による免許の取得が困難な者」が対象で、申請先は希望する者の住所を管轄する都道府県労働局です。
この通知は、申請者について3つの事項を確認し、さらに申請者を雇用する、または雇用しようとする事業者に関する事項を確認した場合に限り免許を与える、という形をとっています。本人だけで完結しません。
マニュアルは、事業場が変わった場合はそのまま潜水業務を行うことはできないとし、別の事業で行おうとするときはあらためて申請が必要としています。退職や帰国のときは免許の返納を申し出て取消しを受けるよう案内しています。
試験を受けずに免許を得るルートですが、条件が細かく、雇う側とセットで審査されます。日本語の試験を受けられる人が使う道ではありません。
国際的なダイビング指導団体の資格を持っていても、それだけで日本の潜水業務に就けるわけではない、という点は押さえておく部分です。
ケース別の整理
| ケース | 潜水士免許 | 理由 |
|---|---|---|
| 素潜りで魚介類を採る | 施行令第20条第9号に当たらない | 送気も給気も受けないため。厚労省の資料も「素潜りなどを除き」としている |
| ボンベを使って水中で作業する | 当たる | 潜水器と給気の2要件を満たす |
| 趣味でスキューバダイビングをする | 規制の対象外とされている | 平成26年の労基署資料が「レジャー(趣味や遊び)などの目的で自発的に潜る者には適用されません」としている |
| ダイビングの指導員として潜る | 当たる | 厚労省のマニュアルが指導員の潜水を潜水業務として扱っている |
| 水中撮影・海洋調査 | 潜る方法で決まる | 給気を受けるなら当たる。素潜りなら当たらない。試験協会も潜水士の活躍の場に海洋調査を挙げている |
| 外国資格を持つダイバー | そのままでは就けない | 第52条第2号のルートがあるが、日本語を解さない者が対象で、雇う事業者とセットで審査される |
※ 労働安全衛生法・同施行令・高気圧作業安全衛生規則および厚生労働省・労働基準監督署の資料から整理したもの(確認日 2026-10-13)。個別の判断は所轄の労働基準監督署・都道府県労働局が行います。
まとめ
- 対象は潜水器を用い、かつ送気または給気を受けて水中で行う業務(施行令第20条第9号)。2つの要件が両方そろう必要がある
- 素潜りは当たらない。厚労省の資料も「素潜りなどを除き」としている
- タンクを背負う方式も対象。法令は「潜水作業者に携行させたボンベからの給気」と書いている(高気圧則第34条)
- 法第61条は、第1項が事業者に、第2項が本人に向けられ、第3項で免許証の携帯を求めている
- 趣味で潜る場合について、平成26年の労基署資料は「レジャー(趣味や遊び)などの目的で自発的に潜る者には適用されません」としている。ただし古い資料で、個別の判断は所轄の監督署に確認する
- 指導する側は業務として潜っている。厚労省のマニュアルは指導員の潜水を潜水業務として扱う
- 免許はダイビングの能力や指導の能力を証明するものではない(厚労省マニュアル)
- 外国資格を持つ人には第52条第2号のルートがあるが、日本語を解さない者が対象で、雇う事業者とセットで審査される
- 自営で潜る人や一人親方の扱いは、条文の文面からは一義的に読み取れなかった
試験の中身と免許交付の条件は潜水士試験に実技はある?泳げなくても受験できるのかにまとめています。
情報源:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第20条、同「労働安全衛生法」第2条・第61条、同「高気圧作業安全衛生規則」第12条・第34条・第52条、厚生労働省「外国において潜水業務の資格を有する方の潜水士免許付与の手続」(PDF・令和元年12月)、同「外国において一定の資格を有する者に対する潜水士免許の付与について」(基安労発1220第1号・令和元年12月20日)、宮古労働基準監督署「レジャーダイビング業における安全衛生対策等について」(PDF・平成26年1月29日)(確認日 2026-10-13)